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ティルソン・トーマスのストラヴィンスキー [音楽:クラシック]

先日、Xavier Rothの所でもちょっと触れた、マイケル・ティルソン・トーマス(MTT)について書いてみようと思います。
何を隠そう、もうかれこれ四半世紀、彼のファンなんです。


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MTTも、充分巨匠の域に達するお歳になっているわけですが、どうなんでしょう、日本での人気というのは。
最近はレコ芸とかの雑誌全然みないので、世間的な評価は全くわからないのですが、あまりメジャーじゃない気がする。

急病のスタインバーグの代役でボストン響を振って好評を博し、若干20代でドイツ・グラモフォンからデビューした、というのは有名な話ですが、そのデビューの選曲がチャイコフスキーの交響曲第一番。渋すぎる。で、わたしが初めて手にしたアルバムもこれでした。高校生の時、80年代前半。「グラモフォン・スペシャル・シリーズ」と銘打った廉価版で、なんと1300円だった。当時のLPはどんなジャンルでも新譜なら大体2500円ぐらいが普通だったので、少ない小遣いには渡りに船と兎にも角にも買ってみたわけです。そしたら素晴らしく爽快な演奏。さざなみのような弦のトレモロから始まり、小気味良いリズムにメリハリの良い木管の響き、もうメロメロになってしまったわけです。それまではアバド一筋でレコード漁っていたのが、その日を境にMTT教の熱烈な信者になってしまった。


MTTのすごいところ、デビューアルバムに続く録音に選んだのが、アイブズ「ニュー・イングランドの3つの場所 Three Places in New England」とラッグルズの「太陽を踏む者 Sun Treader」。20世紀アメリカの音楽。いわゆる「現代音楽」って範疇ですか。未だにラッグルズについてはほとんど録音もない、マイナーな音楽を取り上げるなんて、そしてW. シューマンとピストンへと繋がっていく。これらは結局LPでは国内発売はありませんでした。そのへんについてはまた後ほど。


MTTは全部で5枚のアルバムをDGから出していましたが、そのうち3枚が廉価版で出ていて、それはすぐに全部買いました。ドビュッシーの「映像」とストラヴィンスキーの「春の祭典」。今でこそ「ハルサイ」といったら定番のレパートリーですが、80年代初頭は、まだとんがった音楽、って印象がありましたね。初演時の騒動は有名ですが、80年代でもそんなにライブで取り上げられなかったんじゃないかなぁ。このへんは田舎の高校生だった者の印象なので間違いあるかもしれませんが。まぁ少なくとも、わたしが聴いた範囲の録音ではまともなものはなかったですね。そんなにたくさんのアルバム聞けたわけではありませんが、図書館でせっせとモントゥー盤とか借りて聴いてましたが、何ちゅうか、とりあえず音になってる感じ?フィナーレの生贄の踊りとか、もう団子。

そんな中で、アバド=LSOを愛聴していたわたしですが、MTT盤を聴いてまたまたノックアウトされました。メローにフレーズを歌うさま、複雑なスコアを整理して響かせる手綱さばき、どれをとっても非の打ち所なし。近年はハルサイもスタイリッシュにまとめていくのは当たり前のことだと思いますが、その原点はこのMTT盤にあると思ってます。
さらにさらに、カップリングに収録されたカンタータ「星の王 Le Roi des étoiles」。ロシア語で歌われる男性コーラスを含む曲で、これまためったに演奏されることのない曲。おそらくこのアルバムが初録音じゃないでしょうか?そんなことを微塵も感じさせない、堂々とした演奏。大変お勧めです。

MTTも春の祭典は、このボストン響盤の他に、RCAから現在の手兵サンフランシスコ響との再録、更にはやはりサンフランシスコ響と「Keeping Score」シリーズでDVD/Blu-Rayと、3種の録音を行なっていますが、基本的な解釈は一貫して変わらずですね。収録時間もほぼ一緒。新しい機材を使ったデジタル録音はやはりダイナミズムと細部の造形をしっかり記録している点で素晴らしいですが、わたしとしては、月並みな言葉ですが、若さあふれる才気に満ちた、ボストン響盤のほうが好き。これかDVDについつい手が伸びます。


また、MTTは、鍵盤奏者兼作曲家のRalph Griersonと共に、春の祭典のピアノ4手盤の世界初録音も行なっています。録音時期はDG盤とほぼ同時期の1972年。レーベルを移籍してAngelから発売されています。これもやはり国内盤LPは出なかった模様で、必死に探して今は無き六本木WAVEでLP見つけたときは小躍りしたものです。ただ、音質が悪かった。全編、シャリシャリノイズが乗ってる。

バレエ音楽としてオケ用に書かれている曲ですが、もともと作曲はピアノを使って行われています。それにバレエ音楽ゆえ、バレリーナの練習用にピアノバージョンが必要だったわけです。
ピアノゆえ音色のダイナミズムは限られて面白く無いと思われそうですが、あにはからんや、複雑な曲のラインがすっきり聴き取れる面白いバージョンです。

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サンフランシスコ人

マイケル・ティルソン・トーマスが指揮活動を一時休止....

Michael Tilson Thomas Takes Medical Leave
By Janos Gereben,
June 4, 2019

http://www.sfcv.org/music-news/michael-tilson-thomas-takes-medical-leave
by サンフランシスコ人 (2019-06-06 01:18) 

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