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Theodor Bastardのニュー・アルバム「Vetvi」はロシア悠久の大地を感じさせる意欲作 [音楽:ロシア]

サンクトペテルブルクのアンビエントでトリップホップなネオフォークバンド、「Theodor Bastard」。エクスペリメンタルなアンビエントサウンドでエスノな雰囲気のメロディが奏でられるユニークなアルバムを作り上げてきた彼らですが、前作「Oikoumene」はそれまでと比べてエレクトロ色が抑えめな、ナチュラルなサウンドが全面に押し出されたものでした。
Theodore Bastardの新譜、「OIKOUMENE」を聴く

それに対し、彼らの3年ぶりの新作、「Vetvi」は、「Белое」や「Pustota」ほどではないですが、前作と比べるとアンビエント色が戻ってきたサウンド。エスノな雰囲気と現代的なサウンドが程よくブレンドされたとても上品な仕上がりです。

本作の製作前に、ロシア北部のカレリア地方に通いつめていた模様。その結果、自身のルーツに立ち返るような仕上がりになったようです。「伝統への回帰」といっても単にトラッドの要素を並べるのではなく、彼らの内面に存在するロシア的なものがナチュラルににじみ出たもの。

発売は5月で即購入してたんだけど、まだ記事にしてなかった。時間たっちゃって今更かもしれませんけど紹介してみたいです。





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参加ミュージシャンも多彩。サンクトペテルブルク音楽院出のgzuli(カンテレやハンマーダルシマーの親戚)奏者、Olga Glazova。同じくサンクトペテルブルク音楽院出身のチェロ奏者、Natalia Nazarova。post rockバンド「Pure」のバイオリニストで、ZorgeやTinavieなどのサポートもしている、Gulya Naumova。

7曲目の「Veter」には、アガ・ブリヤート自治管区出身のNamgarが参加。モンゴルや中国の伝承音楽の影響が強いブリヤート民族の歌唱を披露してます。昨年のInna ZhelannayaのアルバムにRadik Tyulyushが参加したりとか、東方の音楽もロシア国内で注目されてきてるんですかね。

パンク系のバンドで活躍する若手ベーシスト、Pavel Paukovの参加も面白いところ。普段やってる音楽と全然毛色が違う。といってもPavel自身はテクニカル系のソロもこなすマルチなベーシストですが。あとは、パーカッション主体のエスノバンド「MājāS」のメンバー、Kirill Serovがドラムス&パーカッションで。などなど。

とまぁ参加メンバーのバックグラウンドはとても多彩なのですが、生み出されるサウンドは「伝統とモダニズムの融合」という方向性でしっかりまとまったものになっております。

ビデオにもなっているタイトルトラックの2曲目「Vetvi」など、奇をてらうことなくモダンなサウンドを積み上げた上品な仕上がり。Yanaのボーカルは、Inna Zhelannayaのような東欧トラッドの典型からはすこし離れていますが、シャーマニックな雰囲気はさらに磨きがかかっている。
3曲目「Salameika」はジャズファンク的なサウンドに巫女的な詠唱が絡みつく意欲作。5曲目「Aion」はメタリックなサウンドとリチュアルなアンサンブルの対比が印象的。

非常にスケールの大きな仕上がり。月並みな言葉だけど、大陸的な懐の深さに感服します。
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