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クルレンツィス=ムジカ・エテルナ@トリフォニーホールにいってきた [音楽:クラシック]

以前から記事にしているようにあたくしはティルソン・トーマスのファンなわけですが、いよいよSFSの音楽監督を勇退するそうですし、今後はそのお姿を拝見する機会も少なくなってくるのかなーと少し感傷的になってしまうのです。

では新しい世代では面白い指揮者誰がいるかなぁ、と。最近気になってる指揮者は3人います。1人はFrançois-Xavier Roth。古楽器団体のLes Sièclesを主宰していることは以前に記事にしました。その後は、フランクフルト交響楽団と併合されちゃった南西ドイツ放送交響楽団の最後の首席指揮者を努めるとともに、2015年からはGürzenich Orchestraの音楽監督も努めてる。
二人目は、2016年からバーミンガム市交響楽団の音楽監督に就いたリトアニア出身の女流指揮者、Mirga Gražinytė-Tyla。まだコンチェルトのバックを出してるだけで、メインを務めてるレコーディングは出してないようですが、YouTubeでライブ音源をいくつか聴くことができます。ベートーヴェンでは弦を対向配置にしてみたりとか、音作りが面白い。今後の化け方に期待が持てる。

で、3人めが、ギリシャ出身のTeodor Currentzis(Θεόδωρος Κουρεντζής)。イリヤ・ムーシンの門下生で、自身の古楽器オーケストラ、musicAeternaを2014年に結成して活躍してる。彼のことを知ったのは、3年前かな。インマゼールの「Anima Eterna」と間違えて検索して見つけたんですよね。やっぱり古楽器系ということで注目したんですけど、youtubeとかで見られる映像見て瞠目しました。ものすごくスタイリッシュで刺激的。ライブでは団員が皆立ったまま演奏するし、見た目にも面白い。そして生み出す音響が、とりわけ奇をてらった解釈をしているわけではないですが、溌剌として新鮮。モーツァルトやチャイコフスキー、マーラー、ストラヴィンスキーなどの興味深い録音を出しています。
Currentzis自身は昨年から、先程あげた新生「南西ドイツ放送交響楽団」の首席指揮者に就任して、ブルックナーやチャイコフスキーを指揮した映像を南西ドイツ放送のYouTube公式チャンネルで公開してました(現在は放送協会でのストリーミングのみ)。


と、前置きが長くなりましたが、その注目筆頭のCurrentzisが来日するとの情報を昨年の今頃に察知したので、発売日にしっかりチケット確保していってきたのでした。もう1週間経っちゃったけど感想書いてみます。

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今回の来日ツアーはオール・チャイコフスキープログラム。チケットとったのは2/11のトリフォニーホール公演です。3階のA席。トリフォニーホールは初めてでしたが、オーソドックなシューボックスタイプ。3階席の真ん中辺りでしたが素直な音響が好ましいですね。ぱっと見で空席もなく、立ち見の当日券もあったようですがそれも完売でクルレンツィスの注目度の高さが伺えます。
曲目はソロにPatricia Kopatchinskajaを迎えてのバイオリンコンチェルトと、交響曲第4番。コパチンスカヤとは協奏曲の録音を出していますし、6番「悲愴」の録音も出してます。それと5番の交響曲もSWRオケとのライブをYouTubeで公開してました。ですが4番は録音出てない初物なので期待が高まります。

ソロのコパチンスカヤはモダン楽器ももちろんですけど、ヘレベッへ/シャペル・ロワイヤルイル・ジャルディーノ・アルモニコと共演したりなど、古楽器でも活躍してる。

何もあたくしは古楽器原理主義者ってわけではないですが、古楽器系のアーティストのほうが自由闊達な音作りしてる人多くて面白いのは確か。上の映像のカデンツァでの暴れ具合とかたまらんです。
今回の公演では、指揮台を置かずにソロと指揮者が向かい合うような位置取りで開演。お互い対等って感じでいいですね。クルレンツィスは指揮棒持たずに踊るように指揮するのが特徴ですけど、対するコパチンスカヤは素足で暴れまわる。フォルテでは飛び跳ねるように大きく体を動かし、クライマックスでは足を踏み鳴らしてリズムとってく。しかもコンマスや指揮者に顔を突き合わせてみたり、まるで団員煽るかのような仕草もすごい。紡ぎ出すサウンドも面白いんですが、完全にライブ向きのパフォーマンスですね。

大変充実した本編に引き続いて、アンコールは3曲も。はじめがクラリネット奏者を引っ張り出しての、ミヨーの「ヴァイオリン、クラリネットとピアノのための組曲」から。今回はじめて聴いた曲ですけど、スカラムーシュと同じ頃の作品ですね。チョチェクの影響もある感じの世俗的な楽しい曲。それに引き続いてはコンマス引っ張り出してのリゲティ「バラードとダンス」。リゲティていうと「ル・グラン・マカーブル」の印象強すぎるんですけど、出自を反映したマジャル的な楽曲も面白くて、この曲はそんな感じ。モルドバ出身のコパチンスカヤには水を得た魚のような感じ?で情熱的な演奏が面白かった。
で、最後に、中国系キューバ人Jorge Sanchez-Chiongの「Crin」。予定調和を破るような、口三味線?インドのコンナコルみたいに演奏しながら口でもメロディなぞる。コンナコルはリズムだけど。コパチンスカヤに捧げられた曲らしいです。

休憩を挟んではメインディッシュの第4番。なんか休憩中にハープ2台設置されて、この時点でアンコールになにか仕掛けがあるのがバレバレなんですが(4番にハープは入ってない)、とにかく4番。
この曲では指揮台おいて、そこは普通なコンサート風景なんだけど、musicAeternaではおなじみである、ほぼ全員起立しての演奏になるのが知らない人だとびっくりですよね。コンチェルトではオケのメンバー皆着席して演奏してましたけど、こちらはチェロとパーカション以外みんな立ってる。
協奏曲でもそうでしたが、弦は対向配置。チャイコフスキーはベートーヴェンやマーラーなんかと違って1stと2ndの掛け合いとかはあんまりないですが、音の響きは立体的になってやっぱりこういう古典的な配置のほうが楽しいですね。
演奏そのものはやはり特に意表を突く仕掛けとかはありませんでしたが、管楽器などの内声部も繊細に響く、細部に気の行き届いた、普通に感動的な名演。クルレンツィスは指揮棒も持たずに踊るように体全体を使ってオケをコントロールしていきます。3楽章のピチカートだけのところとか、腕も振らず目線だけでオケ煽ってるし。眼力で意思疎通って、バンコランか!って感じ(笑

と、充実した公演に満足したところのおかわりが、なんと「幻想序曲ロメオとジュリエット」!いやこれデザートじゃなくて下手したらメインディッシュでしょう!ってものが出てきてびっくりです。20分はかかりますからね。2時間を超す充実した公演で大満足でした。
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